電動キックボードが特定小型原動機付自転車に

1 道路交通法の改正

令和4年4月に道路交通法の改正案が可決されました。新しいルールも必要になりますので、具体的な施行日が決まっていませんが、令和6年4月頃を目途としているようです。

モーターの定格出力が0.6キロワット以下の電動キックボードは、現在、原動機付き自転車(原付)として取り扱われています。

原付は、公道を走れますが運転免許が必要で、自賠責保険に加入し、ヘルメットを着用して車道を走行しなければならないなど、一定の決まりがあります。現在、電動キックボードで公道を走行する際には、道路交通法を守って走行する必要があります。また、制動装置、前照灯、後写鏡等の構造や装置について、道路運送車両法の保安基準に適合しなければ、道路を走行することができません。

例えば、無免許運転の罰則は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですし、飲酒運転やスマホを操作しながらの運転などは勿論違反です。

2 特定小型原動機付自転車

今後、最高速度が時速20キロ以下の一定の条件を満たす電動キックボードは、特定小型原動機付自転車として位置づけられます。

現在と同様に車体に一定の保安部品を備えなければなりませんが、16歳以上であれば運転免許証が必要ではなくなり、ヘルメット着用が努力義務になる見込みです。自転車道も走れるようになります。

移動手段が多様化して便利になっていきますが、交通ルールやマナーを守らなければ、慣れない運転で交通事故が多発することになります。

改正道路交通法の施行後も、新しいルールを十分に理解し、安心安全な運転を心掛けてください。

3 電動キックボードと過失割合

電動キックボードが特定小型原動機付自転車となり原付ではなくなるため、これまで原付の準じて考えられてきた電動キックボードとの交通事故の際の過失の考え方が変わってくる可能性があります。

免許が必要なくなり、自転車と近い取扱いになることにより、電動キックボードとの交通事故の際の過失割合についての裁判所の考え方に変化が発生する可能性があります。

これまでの裁判例の積み重ねがない状態で過失を判断することは、ますます難しくなりそうです。

電動キックボードとの交通事故が発生した場合には、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

交通事故での過失割合

京都も急激に暖かくなってきました。

暖かくなって外出する機会が増えてきますと、歩行者や自転車での交通事故が増加してきます。

皆様も十分お気を付けください。

1 過失割合の決まり方

交通事故での被害の大きさと過失割合は全く別の話になります。

勿論、被害者側の損害が大きい場合が多いですが、被害の大きさを比べて過失割合が決まるのではありません。

例えば、歩行者と自動車の交通事故では、通常は、歩行者の被害の方が大きくなります。

しかし、大けがをしているからといって、歩行者が常に被害者とは限りません。

基本的には、客観的な事故の状況をもとに過失割合は決まります。

話し合いで解決する場合には、保険会社や本人との話し合いで決まることもありますし、裁判になれば事故状況等をもとに裁判官が決めることになります。過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」が典型的な事故状況での判例上の過失割合をまとめており、それを参考にして過失割合を決めることが多くなっています。

例えば、交差点で、歩行者が信号が赤に変わって時間がたってから横断を開始し、自動車が青信号で直進してきてお互いが衝突した場合には、通常は歩行者でも加害者になります。歩行者だからというだけで被害者になるわけではありませんし、歩行者が大けがをしたか軽傷だったかでも過失割合は変わりません。

このように、客観的な事故状況により、過失割合は判断されますが、双方が認識している事故状況が違えば、過失割合の主張は大きく違ってきます。

まずは、事故状況についてのお互いの認識が同じかどうかを確認する必要があります。

事故状況について共通の認識があれば、事故状況に応じた基本的な過失割合や修正要素について検討する必要があります。

事故状況について認識が違えば、それぞれの認識や証拠をもとに過失割合について争うことになります。

2 民事事件と警察

交通事故があると、警察が捜査をします。しかし、警察は行政罰や刑事罰に必要な範囲での捜査をしているため、それ以外の捜査はしてくれません。また、民事についての過失割合を決めてはくれません。

ただし、警察が作成した資料を民事事件で活用することはできます。

警察が作成した実況見分調書などを取り寄せることで、実況見分をした当事者が、実況見分をした当時、事故状況をどのように説明しているかを知ることができます。

ドライブレコーダーや防犯カメラなどにはっきり写っているなど、事故の状況の客観的な証拠が残っていなければ、警察が作成する書類が本人のお話し以外の唯一の書類となることがあります。

交通事故にあわれて過失割合について争うことになりそうな場合は、必ず人身事故届出をして実況見分をしておいてください。

依頼者の本人確認

1 本人確認の必要性

今年もFATF(ファトフ)の年次報告書の提出期間が開始いたしました。
弁護士が依頼を受けることになると、依頼者の代理人として交渉をしたり、依頼者の代わりにお金を受け取って依頼者に返したりするなど、本人に代わってお金のやり取りをすることができます。
弁護士の仕事では大きな金額のお金を扱うこともあります。
お金のやり取りの際に弁護士の口座を間に挟むなどすることで犯罪収益のマネー・ロンダリングに利用されたりすると、弁護士全体が信用を失ってしまいます。
そこで、依頼者の本人特定事項の確認および記録保存等については、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、日弁連の規程および規則が定められました。
弁護士は、現在、依頼者の本人確認をしたうえで、毎年4月から6月末までに毎年きちんと本人確認をしたのかを年次報告として弁護士会に報告します。
また、通常は、代理人として連絡してきたのが資格を持った弁護士であれば、代理権があると弁護士を信用して相手は対応しますので、依頼したのが本人になりすました別の人であるというようなことは許されません。
弁護士は、原則として、依頼を受ける前にきちんと依頼者の本人確認をする必要があるのです。

2 本人確認の方法

個人の方で依頼を考えている方の場合は、実際に弁護士と会って運転免許証やパスポート、顔写真入りのマイナンバーカードなどの顔写真入りの身分証明書の原本を見せていただいて、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人であることが分かります。
実際に依頼者本人と会って顔写真入りの身分証明書の原本等を確認し、コピーを撮らせていただくのが最も基本的な本人確認の方法になります。

顔写真入りの身分証明書をお持ちでない場合には、別の方法をとることになります。
健康保険証、年金手帳などの顔写真のない身分証明書の場合は、2種類の身分証明書の原本をお持ちいただき、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人と確認できます。
これらの身分証明書は、ご本人以外は取得できず、他人に原本を預けることも通常は考えられない書類です。
また、直接会うことができないなど場合には、対面の場合に必要となる身分証明書等のコピーをいただき、その身分証明書上の住所に転送不要の書留郵便で契約書等を送って受け取って契約書等を返送していただければ、ご本人からの依頼であると分かります。
依頼される内容等によっては、もっと厳格な本人確認をしなければならないとされていることもあります。

3 本人確認へのご協力をお願いいたします
依頼者本人にとっては、身分証明書を要求されるような事情がご自身にはないとお分かりですので、身分証明書を要求されて面倒に思われたりご不便をおかけするかもしれません。
しかし、本人確認は重要な制度ですので、ご依頼等の前には本人確認にご協力をお願いいたします。