後遺障害における加重傷害について

この度,弁護士法人心 千葉法律事務所が千葉駅の近くに新しくできました。
千葉の周辺の方は弁護士法人心にますますアクセスがしやすくなったかと思います。
交通事故等で何かお困りごとがございましたら,弁護士法人心にご相談ください。

それでは,本日は,後遺障害の加重障害についてお話します。

1 既存障害があるとき
交通事故にあう前にその部位にすでに既存障害があった方が,同一部位や同一系列の部位に再度交通事故で傷害を受けた場合には,どのように考えればよいのでしょうか。
後遺障害の考え方では,同一部位等に新たに障害が加わったとしても,交通事故前の障害等級よりも等級が重くなるのでなければ,あらたな後遺障害とは評価されません。
事故前のケガや病気で障害のある方が,既存の障害と同じ部位に同じ等級の後遺障害が認定されても,障害等級表上の障害の程度を加重したものといえず,後遺障害に該当しないとされるのです。
被害者の方としては,せっかく痛みをほとんど感じないようになっていたのにまた痛みが出てきたり,もともとあった痛みに加えて痺れまで発生するようになったなどの場合は,納得できないお気持ちは強いかと思います。
しかし,症状が悪化したり加わったりしたとしても,後遺障害等級が同じであれば,前に認定された等級の範囲内の障害として,後遺障害部分が傷害部分とは別に損害賠償の対象となることはないのです。
ケガをした部位に症状が残っていたとしてもある程度以上でないと後遺障害とは認定されないのと同じで,同じ等級内での症状と判断された場合には,事故前と比較した悪化の度合いが小さいと評価され,後遺障害にあたらないことになります。
例えば,何年も前に頸部のムチウチの痛みで後遺障害等級14級9号を認定された方が,再度事故にあわれて頸部のムチウチになって痛みがぶり返りたり,しびれが加わったり等しても,同じ14級9号の認定であれば,後遺障害としての賠償を受けることができないのです。
交通事故にあう前に,ケガをした部位に何らかの症状があったことがある場合には,後遺障害申請をする際に注意が必要です。

2 加重障害の発生

では,事故前から障害が残存していたところに交通事故によって新たに障害が加わった結果,現存する後遺障害が既存の障害の程度よりも重くなったと認定された場合には,どのように考えるのでしょうか。
すでに後遺障害がある方が傷害を受けたのちに同一部位で前回より加重された重い等級が認定された場合には,加重された後遺障害等級の賠償金から既にあった後遺障害等級分の賠償金を差し引いた金額の賠償を受けることになります。
交通事故で発生した損害は,等級が過重となって悪化した部分のみですので,既存障害の部分はその交通事故とは関係のない損害になります。
そこで,加重された後遺障害に該当する賠償金の金額から,もともとの等級に相当する賠償金の金額が控除されることになるのです。
加重障害の方の後遺障害申請や損害賠償請求には,慎重な判断や複雑な計算が必要になることが多いですので,お早めに弁護士にご相談ください。
また,ご相談の際には,事故で症状が出た部位等に事故前に症状が出たことがあったかや過去に交通事故にあったことがあるかなど,古い話でもきちんと思い出したうえでご相談ください。

自賠責保険による賠償について

 少しずつ夏が近づいてきましたが,皆様お元気でしょうか。
 体調にお気をつけてお身体をご自愛ください。

 この度,弁護士法人心は,四日市市に事務所を開設いたしました。
 三重県内では、3か所目、全国では11か所目の事務所となります。
 四日市市の近郊にお住まいの方は,弁護士法人心四日市法律事務所でのご相談もご検討ください。

 では,本日は,自賠責保険について,少しお話したいと思います。

1 自賠責保険とは
  自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車に加入が法律上義務付けられている保険です。
  自賠責保険は,交通事故による被害者を救済を目的としており、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、最低限の対人賠償を確保しています。
  そこで,物損については,自賠責保険からの賠償はありません。
  車の修理代を自賠責保険に請求したいという方がいらっしゃいますが,制度上請求することはできませんので,相手が任意保険に入っていなければ本人に請求するか自分の車両保険を使うしかありません。

2 重大な過失による減額
  自動車事故でケガをした方の過失が10割の場合には自賠責保険からの賠償もありませんが,10割未満の場合には加害者であっても何らかの自賠責保険金の支払いを受けることができます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割以上10割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であっても原則として賠償金は2割の減額がされます。
  ただ,損害額が20万円未満の場合には,減額はありませんし,減額により20万円以下となる場合には20万円が賠償されます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であれば賠償金の減額はありません。
  後遺障害や死亡に係る損害についても,7割以上過失がある場合には,過失の割合に応じて減額がされます。
  傷害部分よりも過失による減額の割合が大きいため,大きなケガをした場合には加害者であっても過失は重要です。
  また,自賠責保険は重大な過失がなければ過失が考慮されないため,過失が考慮される裁判基準よりも自賠責保険の保険金額のほうが高くなる場合もあります。
  示談金の金額について気になった方は弁護士に相談したほうがよいでしょう。

3 自賠責保険からの傷害部分の賠償金 
  自賠責保険の保険金額は,原則として120万円を限度としています。
  治療関係費,文書料等や休業損害,慰謝料をすべて合わせて120万円を限度に自賠責保険から支払いを受けることができます。
  賠償金額が120万円を超えることはよくあることですので,自動車を運転される方は任意保険には必ず加入してください。
  自賠責保険の慰謝料は通院1日につき4200円でしたが,令和2年4月1日以降に発生した事故からは1日につき4300円になり,休業損害や看護料等のいくつかの項目についても,改正がありました。
  自賠責保険の慰謝料の計算方法を見て勘違いする方もいらっしゃいますが,自賠責保険の慰謝料は通院期間と実通院日数の2倍の「いずれか少ないほう」を基準に計算します。
  そこで,ケガをされた方が毎日病院に通っても通院期間以上の金額をもらうことはできません。
  2日に1回以上通っても,通院期間のほうが少なくなりますので,通院期間での計算になりますから,自賠責保険の慰謝料計算上の金額は同じです。
  また,全体として自賠責保険の120万円の上限を超えた場合には,自賠責保険からはそれ以上の支払いはありません。
  仮に加害者が任意保険に入っていても,自賠責保険の上限を超えた場合には,自賠責保険の計算方法とは違う計算方法で慰謝料を計算しますので,日割りで計算すると日額4300円を下回ることになることもよくあります。
  ただし,裁判基準でも,治療期間が長引けば慰謝料の増額幅が小さくなりますので,比例して慰謝料が増えるわけではありません。
  過剰診療と疑われることがないように,医師と相談しながら,必要な期間,必要な頻度で治療を行ってください。

    
  

むちうちでの後遺障害

 緊張が続いていた名古屋も少し落ち着いてきました。
 皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 今日は,よく相談を受けるむちうちの後遺障害についてお話します。

1 自動車事故によるむちうち
 交通事故にあった際に,追突や急停車等の衝撃で,頸部が急激に過伸展,過屈曲の状態になることで頸部に損傷が起こった時,首が鞭のようにしなって振れることにより,頸部痛,痺れ,頭痛,首や肩の筋肉の硬直,めまい等の症状が発生することがあります。
 傷病名としては,「頚椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頚部症候群」等の様々な呼ばれ方をすることがありますが,これがいわゆるむちうちと呼ばれるものです。
 むちうちでは,様々な自覚症状が発生しますが,レントゲンやMRI等の検査に結果が表れるような他覚所見に乏しく,保険会社が早期に治療費の負担を打ち切ることがよくあります。
 しかし,事故の衝撃が大きかったり,衝撃を受けた際の態勢が悪かったりすると,長期的にむちうちの症状が続くこともあります。
 むちうちでは,骨に異常があったり,神経学的検査に反応がないような場合でも,長期的に症状が続くことがあるのです。
 他覚所見に乏しい場合には,医師から,むちうちだけでは後遺障害が取れないと言われることがありますが,そんなことはありません。
 むちうちでも,事故当初から一貫して症状が続いており,適切な治療を受けても強い症状が症状固定時になお残存していて,症状が長期的に継続することが予想されるような場合には,後遺障害が認定されることがあります。

2 むちうちで考えられる後遺障害等級
 むちうちの後遺障害等級としては,14級9号「局部に神経症状を残すもの」,12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。
 後遺障害が認定されれば,賠償金として,後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が支払われることになりますので,症状固定後に自己負担となった治療費を支払っていくうえでも,後遺障害等級の認定を受けることはとても大切です。
 強い症状が残っているのに,むちうちでは後遺障害認定されないと思い込んで申請すらしないと,痛みがあっても病院に通うことができずに大変なことになってしまうことがあります。
 むちうちでであっても後遺障害等級認定を受けられる場合がありますので,お身体に症状が残っているような場合には,一度弁護士にご相談ください。

3 交通事故にあったときには早めに弁護士に相談してください
 交通事故にあった場合には,病院の医師は,ケガを治す専門家で症状が残らないように一生懸命治療をしてくれます。
 しかし,治療後に書状が残った場合に後遺障害申請をすることを考えて準備をしてはくれません。医師は,万一後遺障害が残った場合に証拠となるように考えて検査等をしてくれるわけではありません。
 交通事故にあった場合には,弁護士に相談して,別の視点からのアドバイスを受けていただき,万一の際に備えてください。
 弁護士法人心では,交通事故にあわれた際には無料でご相談を受けておりますので,なるべく早く一度ご相談いただければと思います。

物損事故から人身事故への切り替え

1 事故直後にはケガの自覚がないことも
交通事故のあった直後は痛みがなく,当初は物損事故として取り扱った場合にも,後にケガの症状が出てきた場合には,人身事故に切り替えることができます。
交通事故によりケガをしていても,事故直後は興奮していたり緊張をしているため,痛みを感じないことがあります。
事故直後には気が付かなくても,ケガをしていれば時間がたって落ち着くにつれて痛みを自覚し,ようやくケガをしていたことに気が付いて慌てて病院に行くことになります。
そこで,一旦物損事故として警察が処理していたとしても,交通事故とケガの間に因果関係が認められれば,後から警察に人身事故としての扱いに切り替えてもうこともあるのです。
警察への人身事故届出に期限があるわけではありませんが,時間がたってしまうと因果関係がはっきりしなくなったり,人身事故としての捜査等が難しくなってしまうため,なるべく早く届出る必要があります。
警察への届出を放置せずに,なるべく早く,少なくとも担当警察官に人身届出をしたい旨の連絡をしていただくことが大切です。


2 届出の場所
人身事故の届出は,事故が起きた場所を管轄する警察署に届出をします。
交通事故が起きた時には担当した警察官から担当警察官の名前と連絡先が書いた紙を渡されることが多いですので,大切に保管しておいてください。
担当した警察官が事故の状況等を把握しているため,担当警察官が在籍している警察署で担当警察官と話をする必要があります。
ただ,急に警察署を訪問しても,事故現場を担当する警察官は不在のことや別件の対応中なこともありますので,あらかじめ電話等で連絡をして事前の日程調整をし,必要な書類等を確認してから訪問したほうがよいでしょう。
診断書や印鑑等,届出のために必要なものをしっかり確認してから行くとスムーズに届出ができます。


3 診断書の発行
人身届出をするためには,ケガをしたことを明らかにする必要があるため,ケガを診察した病院の医師が発行した診断書を持参する必要があります。
交通事故の痛みが出てきたら,できるだけ速やかに病院に行き,交通事故にあってケガをしたことを医師に説明して診察や検査をしてもらい,警察に提出するための診断書がほしい旨を申し出て診断書を発行してもらいます。
診断書には名前や生年月日,少なくとも必要になる治療期間などが記載されています。
名前や生年月日などに間違いがあった場合には再度訂正してもらうために病院に行く必要が出てくるため,間違いがないか確認しておくと安心です。


4 人身事故への切り替えの必要
人身届出により,人身事故に切り替えると,実況見分調書が作られたり,事故状況の話を聞かれて供述調書が作られたりして,刑事手続のための捜査がされます。
交通事故の状況に争いが出てきそうな場合には,警察にきちんと捜査をしてもらって事故状況等を記録してもらう必要があるため,当事者や目撃者の記憶が鮮明なうちに捜査をしてもらう必要があります。
この点からも,人身事故に切り替えるのであれば,なるべく早い方がよいでしょう。
警察への届出が物損事故のままでも,保険会社が人身事故として取り扱うこともありますので,必ず切り替えないといけない訳ではありませんが,争いになりそうな場合には届出をしておく必要があります。
人身届出をするべきか等,何か迷うことがあった場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
迷っているうちに時間がたってしまわないようにお早めにご相談ください。

通院をしないことのリスク

1 昨今の状況
 名古屋でも新型コロナウイルスの感染拡大が続いております。皆様お身体に気を付けてください。
 また,公共交通機関の利用を避けるために,やむなく不慣れな自動車を運転される方も増えているかと思います。
 交通事故に気を付けて安全運転をお願いいたします。

2 通院しないことのリスク
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,総合病院への通院に対して消極的に考えている方が増えています。
 弁護士に対しても,交通事故後の通院についてのご相談がありました。
 もちろん,このような状況ですので,ご心配な気持ちはわかります。
 しかし,整形外科等の病院に通院しないと,治療をしないことで当然症状が悪化してしまいます。
 悪化したことについては自己責任と捉えられる恐れもありますし,通院日数が少なかったり間隔があいたことで保険会社から治療費の負担を打ち切られる可能性があります。
 また,通院日数が減少すると,慰謝料等の金額が減ることもあります。
 通院を躊躇するお気持ちも分かりますが,やはり通院しないことにはリスクが伴います。
 通院については,ご自身で判断せずに病院の先生や保険会社の担当ときちんと相談してください。
 また,必要に応じて総合病院から整形外科専門の病院に転院をしたり,病院への通院を減らして接骨院などを併用することも考えられます。
 できる範囲できちんと治療を継続することが大切です。

3 今後への備え
 今後,状況が悪化すれば,新型コロナウイルスの影響で外来診療を停止したり,病院を閉鎖することも考えられます。
 ご心配な方は,余裕があるときに,万一病院へ通えなくなった場合にどうすればよいのかあらかじめ担当の医師に相談しておくことも考えられます。
 もちろん,新型コロナウイルスによる影響ですので,保険会社も配慮してくれる可能性はありますが,最終的にどのような対応をしてもらえるのかは分かりません。
 今後,どのようになるかは未知数ですので,なるべく安全かつきちんと最後まで治療ができるように備えていくことが必要です。
 弁護士はもちろん,主治医の先生や保険会社の担当など,一つ一つ確かめながら,きちんとした治療を継続してください。

交通事故の治療中に交通事故にあった場合

1 被害者からの申告の必要
交通事故で治療中の方が別の機会に交通事故にあった場合,被害者は,2つの交通事故のことについて各保険会社の担当者に話すことが多いです。
双方の交通事故の担当者に別の交通事故のことを話せば,保険会社同士が話し合って,治療費等の対応について,どのように対応するかを決めます。
保険会社がそれぞれ別個に対応する場合もありますし,後から発生した交通事故の保険会社が前の事故の治療についても引き継いで,2回目の交通事故の保険会社だけで対応する場合もあります。
また,2回目の交通事故はケガをする程ではないと判断して,最初の保険会社だけが対応する場合もあります。
どのような対応になるのはケースバイケースです。
ただ,被害者が交通事故について申告をせず,2つの事故の担当者が,自分が対応している交通事故とは関係のない交通事故の情報を知ることができない場合があります。
保険会社が2つの交通事故があったことを知らないと,大きな問題が発生することがあります。

2 過剰な治療となる場合
交通事故の治療中に再度交通事故にあっても,ケガをした場所が全く異なるのであれば問題ありません。
例えば,交通事故で手をケガした方が,再び交通事故にあって足だけをけがした場合,被害者の方が,全く別々の病院で各部位を治療して各保険会社にそれぞれ治療費を支払ってもらっても,お互いに関係がないので問題ありません。
しかし,2回目の交通事故により1回目の交通事故の負傷部位が悪化したような場合には,問題になる場合があります。

3 ある被害者の間違い
被害者の方で,別々の機会の交通事故なので,同じ病院に行くと治療費や通院交通費,慰謝料等が混ざってどちらに請求するべきか分からなくなってしまうと思い,わざわざ別の病院に通った方がいらっしゃいました。
最初の交通事故で通っていた病院では,悪化した症状に対して診察のうえで必要な通院回数を指示し,投薬やリハビリなどの治療をし,治療費を保険会社に請求しました。
新しく通い始めた病院の医師は,他の病院で同じ負傷部位を含めて治療していることを知りませんので,患者の診察をして,通院回数を指示し,症状があるすべての部位について投薬やリハビリなどの治療をし,治療費を保険会社に請求しました。
後に,同じ負傷部位を2か所の治療機関で別々に治療していることが判明し,被害者が受けた治療は過剰な治療であると判断されました。
同じ負傷部位に2倍の治療したからといって,2倍早く改善したりするわけではなく,必要のない治療がされていると判断されたからです。
医師は,診察をして必要な治療やリハビリをしますが,お互いが治療をしていることを知らないと2重に治療をすることになり,過剰な治療になります。
過剰診療になると,必要のない治療が行われているとして,治療費はもちろん支払われません。
また,保険会社は,被害者が別々の交通事故のことを隠して過剰に病院に通って治療をしたと考えて詐欺を疑い,被害者は保険会社から一切の賠償金の支払いを拒絶され,支払い済みの治療費の返金を求められることになりました。
過剰ではなかった分の治療費について請求しようとしても,お互いを知らない医師は,どれくらい余分にした治療か分かりませんので,必要な治療の治療費を証明できなくなり,治療費の請求も困難になってしまっています。
被害者に悪気がなくても,医師や保険会社に何も知らせず別々の病院に通ったことで,大きな不利益を受けることになりました。

4 交通事故の治療中に交通事故にあった場合には
では,交通事故の治療中に再び交通事故にあったとき,被害者はどうすればよいのでしょうか。
まずは交通事故の治療をしている病院へ行き,再度交通事故にあったことを医師に伝えて,症状等が悪化していないかどうかを診察してもらってください。
少し時間がたってから症状が出る場合もありますので,安易に自分で判断せず,2回目の交通事故にあう前の身体の状態を知っている医師の診察を受けて,身体の状態を確認してもらってください。
そして,治療中の交通事故の保険会社には,別の交通事故にあってケガをしたことを伝え,2回目の交通事故の保険会社には,交通事故の治療中の事故であることを伝えてください。
医師の判断,保険会社同士の話し合いで,どの保険会社がどのように対応するのかが決まることが多いです。
このように,交通事故の治療中に交通事故にあったような場合には,様々な点で慎重な対応が必要となります。
弁護士に相談のうえで,適切に対応することをお勧めいたします。

任意保険に入る必要性

年末年始では,交通事故も増加しており,弁護士法人心へのご相談もかなりありました。
今回は,自動車を運転する際に加入している自賠責保険と任意保険についてのお話です。

1 自賠責保険
自賠責保険は,正式には自動車賠償責任保険といい,すべての自動車の所有者に加入が義務付けられている強制保険です。
自賠責保険に入っていない車で一般道を運転することはでず,自動車賠償責任保険証明書を携帯して運転しなければ,処罰の対象になっています。
車検の期間を超える自賠責保険に入っていないと車検を受けられませんので,車検切れの車に乗ったりしなければ,通常は自賠責保険には入っているものと思います。
車検切れの車に乗っていて事故を起こした場合には,加害者が被害者に発生した損害を自分で賠償しなければなりません。
また,自賠責保険は,加害者の過失割合によっては,加害者でも相手の自賠責保険を使ってケガの補償を受けることができます。
車検切れの車を運転することがないように,自動車の所有者はきちんと管理する必要があります。

2 自賠責保険の限界
自賠責保険は,車検切れをおこしていなければ全員が入っているはずの保険ですが,補償の範囲や金額は決められています。
自賠責保険はケガをした被害者への最低限の補償ですので,物損については補償されません。
また,自賠責保険は,最低限の保険ですので,交通事故が発生した場合,通常は自賠責保険で補償される金額を上回る損害が発生してしまいます。
例えば,ケガの部分の自賠責保険での補償は,治療費,休業損害,慰謝料,文書料等のすべてを含めて上限が120万円までです。
きちんとケガの治療をしようとすると自賠責保険では補償が足りないことが多く,上回った損害については,加害者が過失に応じて自分自身で補償しなければなりません。
また,後遺障害が残るような重症なケガを負わせたり,被害者が亡くなった場合には,数億円の賠償が必要となる場合もあり,高額な賠償金が必要になります。
1回の事故で複数の被害者が出る場合もあるため,1人1人では自賠責保険から上回った損害が少なくても,合わさると大きな金額になる場合もあります。

3 任意保険の必要性
最近,任意保険に入っていない方もかなりいらっしゃるように感じています。
車の車種によっては,修理代等が高額になる場合もあります。
個人で高額な賠償金を支払うことは,通常は非常に難しいため,これをカバーするためには任意保険に入る必要があります。
任意保険は,自賠責保険では補償できなかった被害者の損害を賠償してくれる上乗せ保険ですので,自動車等を運転する方は,きちんと自動車保険に入っていただきたいです。
また,保険に入っていない加害者との事故に備えた保険もありますので,加入を検討してもよいかもしれません。
交通事故の被害者からすると,相手が保険に入っていないと,事故にあわされた上にきちんとした賠償もしてもらえないことになります。
弁護士の立場からしても,加害者本人から適切な賠償を受けられることは現実的になかなか難しいことになります。
自動車を運転される方には,しっかりとした保険に加入していただきたいと思います。
また,交通事故の相手は選べませんので,ご自身の保険の契約や更新の際には,弁護士費用特約などの被害者となった場合にも安心できる補償をつけることも検討されてはいかがでしょうか。

相手の保険会社に対する被害者の対応の仕方

1 親切な担当者との付き合い方

交通事故にあってけがをすると,通常,被害者には加害者の加入する保険会社から連絡がきます。
加害者の加入していた保険会社は,被害者が行く予定の病院等に連絡をして窓口負担が発生しないように手配をしたり,毎月連絡をしてけがの状態を確認したりします。
保険会社の担当者には,もちろん親切そうな担当者もいます。
しかし,保険会社の担当者は,本当の意味で被害者の味方になってくれるのでしょうか。
加害者の保険会社は,加害者の代わりに対応しているのですから,仮に被害者に同情しているように見えても,加害者側の人間です。
また,被害者に賠償するのは保険会社ですので,必要な治療とはいえ治療期間が長くなるほど,保険会社の出費は増えることになります。
被害者の中には,事故直後で混乱していいたり症状も重くてつらい時期に自分のために事故対応したり,毎月心配してけがの状況を聞いてくれた親切な担当者だと思って,保険会社の担当者を困らせないようにと考えるかたもいらっしゃいます。
しかし,保険会社が毎月連絡をくれるのは,治療の終了時期を探るためであって,心配して連絡をしてくるわけではありません。
親切な対応は,保険会社が被害者と円満に示談するための手段でもあります。
そこで,被害者は,保険会社からの治療費の支払いや示談金の金額について,保険会社の担当者の「これが精一杯です。」という言葉を鵜呑みにせず,要求すべきことはきちんと要求する必要があります。
保険会社の担当者から「これ以上治療費を支払うことができないので後は自己負担で通って欲しい。その分慰謝料で頑張りますので。」とお願いされたり,示談金について「この金額が精一杯です。頑張りました。」と示談を促された場合には,本当に適切な対応なのかを一度弁護士にご相談ください。
弁護士法人心の弁護士が,交通事故の専門家の視点から本当に適切な対応であるかを検討させていただきます。

2 対応の悪い担当者との付き合い方

加害者側の保険会社の担当者には,何の落ち度もない被害者に対して,まだ治療が始まってもいないのに「そんなに長くは治療費を払えませんよ。」と言ったり,早く治そうと一生懸命治療をしているのに「そんなに通う必要があるんですか。」などと言う担当者もいます。
被害者は,けがによる痛みやストレスで大変な状態なのに,思いやりのない言葉をかけられるとつい感情的になってしまいます。
しかし,保険会社の担当者を怒鳴ったり,書類の返送や担当者の連絡を無視したりすると,治療費の支払いを止められたり,保険会社が被害者のかわりにする予定だった書類の取り寄せを自分でやる必要が出てきたりして,余計に手間がかかることもあります。
保険会社の担当者の態度がどんなものであれ,被害者は冷静に対応し,必要な書類は返送し,主張すべきことは論理立てて主張する必要があります。
被害者は,大変な状態の中でも,保険会社の対応には十分な説明を求め,口頭で話が出来ない場合には,文書やメールでの対応を希望するなど,被害者も対応を工夫し対処しなければなりません。
ただ,保険会社の担当者と話をするだけでストレスだという方もいらっしゃいます。
このような場合に弁護士に依頼すると,弁護士が窓口になって保険会社の担当と交渉等をしますので,被害者が直接担当者に対応をする必要がなくなります。
また,被害者がきちんとした対応をしていても保険会社の担当がきちんと対応しない場合もあります。
相手側保険会社の担当者の態度に困った被害者の方は,一度,専門家である弁護士に相談してみてください。

名古屋で交通事故に関して弁護士をお探しの方はこちらをご覧ください。

交通事故の民事裁判と弁護士費用

こんにちは。弁護士の伊藤美穂です。
今回は民事裁判をした場合に,加害者に自分が負担した弁護士費用をどの程度支払ってもらえるのかについてお話します。

1 交通事故の民事裁判
交通事故で損害賠償を請求しても話し合いで解決できなかった場合に,相手に賠償金を支払わせるために裁判をすることがあります。
弁護士費用特約に入っていれば,弁護士費用の負担がなかったり,軽い負担になったりするので,弁護士費用のことを気にすることなく裁判をすることができます。
ただ,弁護士費用特約に入っていない場合でも,通常,裁判をする際には弁護士に依頼することが多いです。
被害者本人が,裁判所に提出する書面を作ったり,毎回裁判に行ったりすることが,現実的には難しいことが多いからです。
では,加害者や加害者の保険会社が請求した賠償金の支払いに応じずに裁判になってしまった場合,裁判のためにかかった弁護士費用は誰が負担するのでしょうか。

2 弁護士費用の負担
民事裁判は自分で行うこともできますので,弁護士に依頼するかどうかは被害者の自由です。
自分の労力と時間を使って,被害者自身が裁判をしたという方もいます。
そこで,実際に弁護士費用がかかったからといって,その全額が事故と因果関係がある損害として認められるわけではありません。
では,裁判所は,どのようにしてその金額を判断しているのでしょうか。
もちろん,裁判所が,事故と相当因果関係のある損害としていくらを加害者に負担させるかは,個別の事情にもよります。
しかし,実務上は,事故と相当因果関係がある弁護士費用として認められるのは,裁判所が損害として認めた額の10%となることが多いです。
裁判所の認容した額の10%となると,実際にかかった弁護士費用のごく一部になることが大半です。

3 弁護士費用特約の必要
このように,裁判をしても,認められる弁護士費用は,被害者が負担しなければならない弁護士費用のごく一部だけということが多いです。
交通事故にあって,加害者からしっかりと賠償を受けるために裁判をしようとしても,費用がかかって弁護士に依頼することが出来ない場合も考えられます。
そこで,交通事故にあわれた方は,ご自身やご家族の自動車保険,ご自宅の火災保険等に弁護士費用特約がついていないかどうかをご確認ください。
弁護士法人心にご相談の際に加入状況を教えていただければ,弁護士に依頼するべきかや依頼するタイミング等についてもお話させていただきます。

交通事故で健康保険を使う場合に必要な届出

名古屋でも段々と暑さが緩んでまいりました。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
今回は,交通事故で健康保険を使用する場合についてお話します。

1 第三者行為による傷病届
被害者の方にも過失がある等,交通事故に遭った被害者の方が,ご自分の健康保険を使って通院される場合があります。
交通事故のように自分以外の第三者の行為によって負傷した場合に健康保険を使って通院するには,自分の加入している健康保険組合に対して,第三者行為による傷病届等の書類を提出する必要があります。
勿論,交通事故で病院に行く前に提出することは現実的には難しいですので,後日,出来るだけ早く提出すればよいことになっています。
労働災害の場合を除いて,治療をする際に健康保険を使って治療を受けることは認められています。
被害者の方にも過失があって自己負担が生じる場合,被害者が一旦立て替えて支払わなければならない場合,治療費が高額になり過ぎないようにする場合など,被害者であっても健康保険を使用することがあります。

2 届出が必要とされる理由
それでは,なぜ届出が必要になるのでしょうか。
通常,病気になったり,自分でころんでけがをした治療の場合等で,健康保険を使うときには,病院で健康保険証を提示する以外に届出は必要ありません。
しかし,交通事故により治療が必要になった場合には,その治療費の全部または一部は,本来,加害者が支払うべきものです。

健康保険組合は,被害者が窓口で支払った治療費を除いて病院に支払いをしますが,これは加害者が支払うべき治療費を健康保険組合が立て替えて支払っているということになります。
そこで,健康保険組合は,後日,加害者に立て替えている分の治療費を請求します。これを求償といいます。
健康保険組合が加害者に立て替えた治療費の請求するためには,加害者の情報が必要になりますので,第三者行為による傷病届等を提出する必要があるのです。

3 弁護士にご相談を
健康保険を使用して通院するべきかは,それぞれの事故の状況や事情によって様々です。
健康保険を使って通院する必要がない場合にも,相手保険会社に使用をお願いされる場合もあります。
相手保険会社からお願いされる場合には,ある程度書類を整えてくれますが,ご自身で届出書類を作成する場合にどうすればいいか分からないかたもいらっしゃいます。
相手保険会社から健康保険を使うように言われたなどで健康保険を使うかどうかの判断に迷われた方や,交通事故で健康保険を使った後にどうすればいいか分からない方は,是非,弁護士法人心にご相談ください。
詳しい事情を伺って,弁護士からアドバイスをさせていただきます。

交通事故後すぐに初診を受ける必要

残暑はまだまだ厳しいですが,名古屋も少し涼しくなってきました。
皆様は体調を崩したりしていないでしょうか。

1 初診の遅れ
夏休みやお盆の間に交通事故の被害者になった方から,この時期に増える相談があります。
初診が遅れてしまい,保険会社が治療費を払ってくれないという相談です。
お盆休みや年末年始などは,医療機関も休診になる場合も多いです。
また,この時期は旅行や帰省中であったり,交通事故にあって痛みを感じていてもすぐに医療機関に行かず,初診までの間隔がかなりあいてしまうことがあります。
交通事故で痛みが発生してもすぐに病院に行かなかった場合には,初診が遅れたことで治療費の支払いを拒絶される場合があります。
事故から2週間程度が経過すると,自分の加入している保険会社の人身傷害保険や自賠責保険であっても,事故と症状との因果関係を否定して治療費の支払いを拒絶される場合が多いです。

2 事故と症状の因果関係
初診が遅れてしまうと,その症状がその交通事故により発生したものか,通院までにそれ以外の原因があったなどの様々な可能性がでてきてしまい,時間が経てばたつほど事故が原因かどうかがはっきりとは分からなくなっていってしまいます。
通常,交通事故に遭われて症状がでれば,治療のためにすぐに病院に行くと考えられています。
すぐに病院に行かなかったことについてよほど合理的な理由がなければ,治療費を支払ってもらえないという事態が生じてしまうのです。
何週間も経ってから始めて診察を受けたような場合には,なぜ症状があったのに病院に行かなかったかを十分に説明できなければ,保険会社に治療費を支払うよう説得できません。
交通事故に遭われた方は,痛みや違和感等,何か身体に症状がある場合には,すぐに病院で診察を受けて,自分の症状を詳しくお話してください。
また,初診が遅れた場合でも,事故直後に違和感があって徐々に痛みが増していったなど,小さな症状についてもいつからどのような症状があったのかを詳しく医師に説明して,症状が発生した時期をカルテに残しておいてください。

3 交通事故に遭ったときには
交通事故に遭われた方は,まずは弁護士法人心のホームページをご覧ください。
ちなみに,弁護士法人心のホームページ上の集合写真が新しくなりました。
こちらの弁護士法人心のホームページを是非ご覧になってみてください。
弁護士法人心のホームページも弁護士法人心の弁護士,スタッフも日々進化を続けてまいります。

示談のタイミング

名古屋も急に暑くになってきましたが,皆様いかがお過ごしでしょうか。
今日は,交通事故の被害者が示談をするタイミングについてお話します。

 

(1)相手と一旦示談してしまうと原則やり直せません
相手の保険会社にいわれるままに示談書や免責証書にサインをしてしまった被害者の方が,後々やはり納得できないと思って弁護士に相談される場合があります。
また,中には,治療中にもかかわらず相手の保険会社と示談してしまったという被害者の方までいらっしゃいます。
しかし,一度相手と示談をして書面にサインをしてしまうと,原則として示談をやり直すことは困難です。

 

(2)示談の効力
治療中に示談をしてしまうと,示談をした後に思った以上の治療費がかかったり,後遺障害が残ったりした場合でも,原則として補償を受けることが出来ません。
また,一旦保険会社の書面にサインをしてしまうと,後に金額が低額であることが分かっても原則として再度交渉して増額をさせることもできません。

相手の保険会社から送られてきた書面には,今後この交通事故に関して一切の請求をしない旨の清算条項が入っているのが通常だからです。
もちろん,示談した時点で予想すること不可能な後遺障害が発生した場合に,示談後の請求を認めた判例等もあります。
しかし,当事者が納得して合意したはずの内容に変更を加えるのは例外的なことであると通常は考えられています。

 

(3)示談するタイミング
交通事故で示談する場合には,治療が終了し,後遺障害申請の結果が出るなど,全損害が確定してから示談をしてください。
また,仮に傷害部分を後遺障害の認定前に示談する場合には,示談書や免責証書に「後遺障害部分を除いて」との文言があるかどうかを確認してください。
全損害が確定して初めて,適切な賠償金額がいくらかを判断することが出来るようになります。

 

(4)示談前にご相談を
低額な金額で示談して後悔をすることがないよう,必ず示談する前に弁護士法人心にご相談ください。
適正な示談金額等について,弁護士からアドバイスをさせていただきます。

交通事故による賞与の減額

名古屋も段々と暑くなってまいりました。
そろそろボーナスの支給時期といった方もいらっしゃると思います。

交通事故にあった方が,勤務日数の減少等により,ボーナスの金額が減額されてしまうことがあります。
勿論,会社の規定や好意で全く影響もなく支給される場合もあります。
その場合には問題になりません。
ところが,保険会社から休業損害を受け取ったとしても,勤務日数等の不足でもらえるはずだった賞与が減額されることもあるのです。
気づかないうちに賞与が減額されれば,交通事故の被害者にとって大きな損害になります。
交通事故による休業等が原因で賞与が減額されてしまった場合には,会社に賞与減額証明書を書いてもらえれば,就業規則等の計算方法により減額された分の賞与を損害として保険会社から受け取れることがあります。
賞与を支給するかどうかや支給金額を決める要素は,業績や人事評価など様々です。
しかし,就業規則等に賞与支給の基準があって,それに基づいて交通事故が原因で減額をされているような場合には,書類等により交通事故が原因で賞与が減額されたと立証できますので,容易に減額分の請求は可能なのです。
賞与減額証明書には,平常に勤務していた場合の支給金額および支給計算式や,欠勤により減額した額および減額計算式等の様々な記載が必要ですが,会社できちんと決まっていれば,記載していただくことは可能です。
賞与の減額根拠となる証拠である,規定内容が書かれたものの写しが必要となりますので,会社の協力は不可欠です。

保険会社が賞与の減額の有無について被害者に確認してくれることはあまりありません。
自分で賞与の減額がないかを把握して請求しないと,示談した後には請求することができなくなります。
交通事故にあって休業が生じた場合には,賞与の減額がないかについてチェックをしたほうがよいと思います。

休業損害の計算方法については,こちらをご覧ください。

交通事故の相談で事故の相手方の名前を聞く理由

1 相手等の名前を確認する必要
弁護士が相談を希望する方からご相談を受ける場合,必ず紛争の相手方等の名前を確認しなければいけません。
これは,弁護士自身と相談者の利害が対立したり,弁護士が依頼を受けている別の依頼者や顧問先との利害が対立したりなどする場合に,弁護士の職務の公正に対する信頼が損なわれるからです。
例えば,同じ事務所の中で,当該交通事故の加害者の刑事弁護をしている弁護士がいたり,加害者の勤め先が事務所の顧問先であったりした場合には,自分の話したことが相手に伝わってしまって相手が有利になるように情報が使われるのではないかと心配になってしまいます。仮に実際に情報が伝わらなくても,情報が伝わる可能性があるだけで弁護士に対する信頼が損なわれてしまうのです。
また,弁護士を信用してすべての事情を話していただかないと,適正な判断をすることはできません。相談する際に心配してすべての情報を話せないようでは,きちんとした法律相談はできません。
一方,相談者は断られたとしても,別の弁護士に相談することができますので,無理に利益相反となる弁護士に相談する必要はありません。
そこで,弁護士法等で,利益相反関係にある場合には,原則として依頼を受けることはできないと定められています。

2 確認のためのご協力
このように,弁護士は,ご相談を受ける前にきちんと相手方などの名前を確認して,相談や依頼を受けたことがある人ではないかを確認しなければなりません。
当事務所にご相談の際にも,お電話をいただいた方に相手方の氏名を確認させていただいております。
ご相談の前に必ず伺う必要がございますので,ご相談の際にはあらかじめご準備をいただくとスムースにお調べすることができます。
また,お調べした際にもし同姓同名の方が過去の相談者等にいらっしゃった場合には,相手の年齢や住所などできる限りの情報をいただいて調べることになります。情報をいただいても利益相反の可能性がある場合には,申し訳ございませんが相談自体をお断りさせていただいております。
色々な情報を伺うことになり,お手数をおかけすることにはなりますが,弁護士に相談する際には必ず必要となることです。
今後ともご協力をよろしくお願い致します。

名古屋駅法律事務所の交通事故のサイトはこちら

実況見分調書について

こんにちは。弁護士の伊藤美穂です。

今日は,交通事故で人身届出をしたときに作成される実況見分調書についてお話します。

交通事故にあわれた方が,警察にケガをしたと申告して病院の診断書を提出すると,警察が当事者双方の話を聞いて実況見分調書を作成します。
実況見分調書を作成する場合には,減速した位置や相手を発見した位置など,事故の状況について当事者が警察に話したことが,実況見分調書に記載されて記録として残ります。
物損として警察が受け付けて,物件事故としての書類を作る場合には,実況見分調書は作成されません。

実況見分証書を作成していれば,調書を作成したときに相手が主張していた事故状況が記録としてある程度残ることになり,その後に違う事故の状況を主張しても,主張が変わった理由を合理的に説明できなければ,証拠として信用されないことになります。

ただ,実況見分調書は,警察が刑事手続のために作成するものであり,民事事件のためのものではありません。
そのため,警察の捜査が終了して,加害者の刑事処分が決まるまでは,実況見分調書などの警察が作成した書類を取得することができません。
交通事故の件が刑事裁判になっていれば,裁判手続が終わるまでは取得できません。
また,どのような手続がとられたかによって取得できる書類が決まっていたり,取得方法が決まっていたりすることもありますので,作成されていても取得できない書類もあります。

自分に過失が無いような場合には,人身届出をして,実況見分調書を作成しておいたほうが安心です。

休業損害と有給休暇

 こんにちは。弁護士法人心名古屋駅法律事務所の弁護士伊藤美穂です。
 本日は,弁護士として日々の法律相談をしていて気になったことについて,お話をしようと思います。

 会社などにお勤めの方が,交通事故のケガの治療のためにお仕事を休んだり早退したりして通院することが必要になった場合には,仕事を休んで減給された給与分の休業損害が相手の保険会社から支払われます。
 ケガをされた方に,交通事故がなければ得られたはずの収入が得られなかったという損害が発生したためです。

 では,有給をとってお仕事を休まれた方には,休業損害は支払われないのでしょうか。
 確かに,有給休暇を使用して休んだ場合には,給与は減額されません。
 しかし,おケガをされた方は,本来は他のときに利用できた有給休暇を取得する権利を失ってしまいます。
 また,交通事故がなければ残りの有給の買取りを会社に請求する予定だったかもしれません。
 怪我の治療のために有給休暇を取得して休んだ場合には,休業しても現実の収入減額は発生しませんが,財産的な損害は発生していると考えられます。

 そこで,交通事故のケガの治療のために必要があって有給休暇を使用してお仕事を休んだ場合には,給与の減額がなくても,休業損害が発生していると言えます。
 会社に書いてもらう休業損害証明書の用紙を見ていただければ,内訳として,使用した年次有給休暇の日数を書く欄があることがわかります。

 法律相談の中で確認すると,保険会社からの十分な説明を受けておらず,交通事故のために仕事を休んだけれど有給休暇を使ったから休業損害を請求できないと思っていらっしゃっる方がかなりいらっしゃいます。

 有給休暇を使用して病院に通われた方は,せっかくの有給休暇の権利を失ってしまったのですから,是非,会社に休業損害証明を作成してもらってきちんと有給休暇分の補償を受けてください。

 そして,交通事故のことで何か気になる点があったり,分からないことがある場合には,是非,弁護士法人心までご相談ください。
 交通事故の被害者が,しっかりとした賠償を受けられるよう,ご相談にのらせていただきます。