交通事故と行政処分・刑事処分

1 交通事故と行政処分

 交通事故を起こしても、誰にも怪我をさせてない場合には、物損事故になります。

 物損事故の場合、当て逃げをしなければ、原則として行政処分を受けることはありません。

 行政処分が行われる場合、違反行為の内容により違反点数が加算され、過去3年間の合計点数(累積点数)に応じて、免許の拒否、保留、取消し、停止等の処分を受けることになります。

 刑事罰とは違って、道路交通上の危険を将来的に防止するために行われる処分ですので、刑事処分とは別に行政処分も受けることになります。

免 許停止や免許取消になると、車の運転等をすることができなくなるので、仕事で運転をしていたり、介護や子供の送迎に車が必要な方などにとっては、死活問題です。

2 交通事故と刑事処分

 交通事故の刑事処分には、懲役、禁固、罰金などの刑罰があります。警察が捜査をして検察に証拠等を送った後、検察が刑事処分をするべきであると判断すると検察が起訴をし、裁判が開かれて裁判所が刑事処分を決定します。起訴をされて刑事処分を受けると、前科がつくことになります。

 検察が起訴する場合には、罰金が相当と考えた際の略式起訴と懲役や禁錮などの重い処罰が相当と考えた際の正式起訴があります

 略式起訴であれば本人が裁判所に行かずに処分されますが、正式裁判の場合には、裁判所で裁判が開かれて通常は本人が何度か裁判所に行き、刑事処分が決定されます。

3 物損事故のままにするデメリット

 交通事故の加害者には、行政処分や刑事処分を免れるために、人身事故届をせずに物損のままにして欲しいと懇願してくる人もいます。

 しかし、被害者の方は、人身事故届をしないことで不利益を受けることがあります。

 物損事故の場合は、刑事事件にはならないので、警察は、物件事故報告書という簡単な事故書類を作成するだけで実況見分調書などを作りません。人身事故の場合には、後の裁判の根拠となるように、当事者や目撃者に詳しい事情を聞いて供述調書を作成したり、実況見分をして事故の状況を詳細に記録してくれます。

 物損事故のままでは、過失割合で争いになっても、実況見分調書がないため事故当時当事者が主張していた事故状況を確認できません。

 また、物損事故のままにしておくことで、治療期間や後遺障害の際に、場合よっては軽くみられてしまうなど不利益に扱われることもあります。

 交通事故でケガをした以上は、できる限り人身事故に切り替えておく方が安心です。

4 交通事故の際にはすぐに弁護士にご相談ください

 一旦物損事故として処理されたとしても、事故が原因で負傷したと言える場合には、警察に診断書を届け出て、物損事故から人身事故に切り替えることができます。

 しかし、加害者や相手保険会社から、物損事故のままでもきちんと賠償しますと言われて、デメリットを理解せずに人身事故としての届出をしていない方もいらっしゃいます。

 交通事故にあった方は、すぐに弁護士にご相談ください。