交通事故の時効

1 交通事故で物が壊れた場合

  交通事故で物が壊れた場合には、その物的損害の損害賠償請求をすることができます。

  このような物的損害の損害賠償請求権は、不法行為による損害賠償請求権ですので、原則として損害と加害者を知ったときから3年で時効になります。交通事故の場合には、通常は、事故に遭った時に損害と加害者を知ることになりますので、交通事故発生の翌日から3年で時効になります。

  当て逃げなどで加害者が不明などであれば3年経っても消滅せずに加害者が見つかってから3年は時効になりませんが、不法行為時から20年が経過した時には時効により消滅します。

2 交通事故の人がケガをした場合

  交通事故で加害者からケガをさせられた場合には、加害者に対して損害賠償請求をすることになります。

  人身損害についての損害賠償請求権も、不法行為による損害賠償請求権ですが、原則として損害と加害者を知ったときから5年(令和2年4月1日の民法改正前に発生した事故の場合は3年)で時効になると定められています。

  また、ひき逃げなどで加害者が不明などであれば加害者が見つかってから5年は消滅しませんが、事故から20年が経過した時には時効により消滅します。

  交通事故の後遺障害については、ケガの時効とは別で、症状固定日の翌日より起算して5年(令和2年4月1日の民法改正前に発生した事故の場合は3年)で時効になります。

3 自賠責保険金(共済金)の時効

  自賠責保険に対する請求権は3年(平成22年3月31日以前に発生した事故については2年)で時効となり、自賠責保険の保険金を請求する権利が消滅します。

  現在は、交通事故にあった場合には、傷害部分については交通事故発生の翌日から、後遺障害については症状固定日から、死亡の場合は死亡した日の翌日から、それぞれ3年で時効になることになります。

  そこで、何らかの理由で自賠責保険に対する請求が遅れてしまう場合には、権利が時効消滅しないように時効更新の制度を使用する必要があります。時効の更新をするためには、自賠責保険会社に対し、時効更新(中断)申請書を提出することが必要です。

4 交通事故の民事損害賠償と時効

  交通事故で大けがをした際に、壊れたもののことまで対応できなくて、物的損害について時効になってしまうことがありますが、物損についてはケガとは別に早めに示談をしなければなりません。

  また、治療が長期にわたる場合には、時効にならないように時効を更新する必要があります。特に交通事故による後遺障害の時効は、症状固定日の翌日から5年で時効になりますので、症状固定日は厳格に判断して更新しておく必要があります。

  また、自賠責保険の時効は更新したので時効は大丈夫だと思っている方もいらっしゃいますが、自賠責保険に対する請求はあくまで自賠責保険への請求ですので、加害者に対する損害賠償請求権の時効は更新されません。

  自賠責保険に対する時効の更新とは別に、加害者に対する時効も更新しておかなければなりません。後遺障害の認定結果が納得できずに何度も異議申し立てをしていたり、相手保険会社の示談交渉を放置していたりして長期化してしまうと、いつの間にか加害者に対する請求が時効になって賠償請求ができなくなることもありますので、注意が必要です。

5 時効の更新

  自分の請求権が時効になりそうな場合には、時効の更新をして、時効の進行をリセットする必要があります。

  裁判上の請求をしたり、被害者に対する賠償義務があることを加害者自身に認めさせたり、当事者間で協議することに合意する書面や電磁記録を作ったりすることで、時効を更新することができます。

  しかし、被害者自身が時効の更新をすることは手間と時間がかかります。

 

6 治療が長期化する場合には弁護士にご依頼ください

  被害者の権利が時効になってしまうと、権利を行使することができなくなってしまいますので、賠償金を受け取ることができなくなります。交通事故の損害賠償請求件の時効管理には細心の注意が必要です。

  早めに弁護士に依頼しておけば、きちんと弁護士が時効にならないように対応いたします。

  交通事故で大きなケガをされた場合には、お早めに弁護士法人心にご相談のうえ、ご依頼されることを検討してみてください。